最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

016.それと、君の写真

昼休み、先輩と写真の話をした。

僕はコンデジを持ってプラプラして、いい風景があったらパチリと撮影するお気楽派で、
先輩はデジイチでもってレフ板とかをしっかり使って撮影したい本格派である。
といっても結局カメラなんて「あっ」と思ったらシャッターを切っているもので、
撮る写真が極端に違う訳でもない。二人ともスナップ写真が好きなのだ。

しかし先輩が見せてくれた写真は、僕の撮る写真とは、
ちょっとどこかが違っていた。




違いは簡単である。国だ。
先輩が見せてくれた写真はアメリカの空の写真だった。

僕は空が大好きで、夏場になると『暑い、頭おかしいんじゃないの』
と愚痴を漏らしつつも、上空に燦然と映る入道雲に心を踊らせてしまう。
だから必然的に撮る写真も空の写真の割合が多い。
しかし、先輩の見せてくれた撮ったままの写真と、僕の撮ったままの写真は、
『色』が全然違っていた。恐らく、カメラの性能云々の話ではない。

夕暮れの写真が特にそうだ。
日本の夕焼けは、往々にして淡い群青から白に近づき、それがオレンジになっていく。
アメリカの夕焼けはそうではない。原色バリバリのグラデーションなのだ。
先輩の写真の空は、濃い青から紫を経て、橙色に溶け込んでいくような夕焼けだった。
思えば、アメリカや海外の商品は色彩鮮やかなものが多い。
そして日本は、今でこそ少なくなったものの、昔の初期浮世絵とかを見れば、
淡い色使いが多く、現在も色彩豊かなものはかなり少ない。
僕達は「きっと、普段から見てる景色が違うからだろう」という結論に達した。
理由は定かではないけど、日本は他の国と比べて景色が淡く見えているんだろう、と。

今まで僕は、あまり海外に行きたいとは思わなかった。
なんせ語学がろくでもない。行ったところでどうなることやら。
だけど、先輩が見せてくれたアメリカの空を見て、
久しぶりに他の国に行ってみたいなと思ったりした。
そこにはどんな色をした空があるのだろう?

空好きの血が騒いだ、午後二時過ぎ。
外の景色は相変わらず淡い。