最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

026.殺された君の歌があった



まだ僕の元へ着ていなかった頃の相棒の写真。


実は僕の持っているアコギはアウトレット品である。
下見に行った時に店でやっていたアウトレット市で売られていて、
定価のものとは一万円ほど違っていた。
シェイプは全く同じで、違いはボディ背面の擦り傷と、
全体的な色味。アウトレット品は黒く、新品は薄めの色だった。

アウトレット品は取り置きが出来ないといわれ、
さらにはこれを狙っている他の人もいるともいわれた。
アウトレット市はその日で終わり、給料が入って買いに行けるのは一週間後だった。
僕は新品のほうをとりあえず取置いてもらう事にして店を出た。

一週間後、店に行ってみるとそこには、
未だにアウトレット価格でぶら下がっているあのギターがあった。
アウトレット市終了後、他の店に送られる前だったという事だった。

そして今は僕の部屋で、いつもはハードケースに守られながら、
夜になると控えめの和音を出している。