最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

039.All you need is TOUGH!!!!

昼ご飯は、大切だ。

午前中の仕事を終えて、午後へ向けての転換点に当たる。
移動で考えれば乗換駅だ。間違えれば明後日の邦楽へ行ってしまう。
だから昼ご飯に何を食べるかは、その後の生活に多大な影響を及ぼす。

だから美味い昼ご飯を僕は探し求める。


今日入ったのは、高架下にある居酒屋だった。
隣にあったつけ麺屋もよかったかもしれないけど、生憎人は混んでいたし、
そもそも昨日の昼ご飯に僕はつけ麺を食べていたのだ。
二日連続で同じものはなるべくとらないのが僕なりの美学だ。
それに、高架下にある、ボロボロになった居酒屋。こういうのに僕は弱い。

入ってみると60後半になるくらいのおばあちゃんが迎えてくれた。
席につき周りを見回す。壁には黄色に紙に太い黒のマジックでメニューが描かれている。
しかもその量ときたらはんぱない。一面の壁には隙間なくメニューが貼られている。
いか姿焼やなんこつ炒、なんとも酒の進みそうな素晴らしい響きだ。
だけど今は昼である。僕はおとなしく、それでいて興奮気味にサバの味噌煮定食を頼む。
出てきたのはかなり濃いめに味付けされたサバの味噌煮。
ツブ貝二つになめこのみそ汁、そして安っぽい漬け物があった。

ツブ貝は初めて食べたけど、こんなのが600円のセットについていいのか、
そう思うくらい上等な味だった。サザエはこれより美味いのだろうか?
これより美味かったらそれはどんな味なのか? でも僕の前にあるのはツブ貝だ。
文句なんて何も無い。ふたつのツブ貝を噛み締めて食った。

そしてサバの味噌煮は正しく味噌だった。骨がやけに多かったのが辛かったが。
それは値段を考えれば至極全うな処遇だし、それを補って余ある美味さだった。
一緒に付いてきた白いご飯にほぐした身と煮汁をかけるのは礼儀作法だ。

渋谷はシャレた街じゃあないぜ。