最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

043.それも良いよな、なんて思えてる

僕が常日頃お世話になっている文具店がある。
今度その店の一周年企画の一環で、
『緑のインクに合う万年筆はなにか』というのを考える機会があった。
当初はTwitterで考えていたのだけど、興奮してタイムラインを万年筆まみれにしたので、
今回ちゃんとブログの記事としてまとめようと、まぁそういう次第である。

というわけで今回は、個人的な選出による『緑のインクに合う万年筆』まとめである。
かなり長くなってしまったが、読んで頂けると嬉しい。


万年筆と一言にいっても、その価格帯は広い。
安いものなら2000円クラスから、高いものは100万近いものまで。
今回はその中から『使った事のあるもの』と『憧れるもの』を選んでみた。


まず一番安くてベターそうなのは、LAMYの『safari』。
カラーはクリアーと2012年限定のグリーン。
色付きのインクの場合、やはりそれが栄えるのはクリアーボディの万年筆だ。
safariは元々カートリッジ式だが、コンバーターを使う事で他社のインクを使う事が出来る。
ただLAMYのコンバーターは尻の部分が赤いので、そこはちょっと合わないかもしれない。
2012年限定のグリーンは、明るい緑にならよく合うだろう。

同じ価格帯で名門パイロットの『プレラ 色彩逢い』のグリーンも推したい。
このシリーズは同社のインクシリーズ『色彩雫』用に作られた万年筆で、
透明軸にコンバーター標準装備の万年筆だ。明るめのグリーンのキャップが目を引く。
コンバーターの色も黒で、LAMYのそれよりは統一感を出してくれるだろう。


次は価格帯を少し上げてレシーフの『クリスタル』のグリーンだ。
レシーフ自体はそこまで著名なメーカーではない。フランスの文具メーカーだ。
クリスタルは濃いめのグリーンが眼を引くが、最も特徴的なのはそのインクの補充法だ。
なんとボディにそのままインクを注ぐという、他にはない方法を取っている。
本来後ろ半分を、口の大きなカートリッジのように扱っているのだ。
これならコンバーター式よりも手近にインクの流動を感じられるのではないだろうか。
個人的にはこれが一番合う気がしているのだが、書き味が不明なのでここで上げておく。


さてここから一気に価格を引き上げる。
なんせ、緑という色付きのインクに似合う万年筆はどうしても透明軸が中心になる。
さらにいえばインクをボディとコンバーターの二重越しにするのも避けたくなるから、
そうなると必然的に価格の高い吸引式の万年筆になってくるのだ。


吸引式で透明軸、安く手に入るのは二種類ある。
パイロットの『カスタムヘリテイジ92』とペリカンの『M200 デモンストレーター』だ。

カスタムヘリテイジ92はパイロットの出している吸引式万年筆では最安値のモデルだ。
だが安いからと侮るなかれ、その機構はしっかりしているし、ペン先は14金である。
ネットなら12000円クラスで買えてしまうのはかなり魅力的だろう。

M200 デモンストレーターは『スーベレーン』と並んで同社を代表する万年筆だ。
吸引機構を見せるための、文字取りデモンストレーションモデルとして作られたのが始まりだ。
こちらは年によって色違いで出されており、僕は2008年のブルーモデルを持っている。
最近になり、2000年に作られたクリアーモデルが限定6000本で生産されたので、
緑のインクにならこのクリアーモデルがいいだろう。

この二本のどちらかひとつに絞れ、といわれたら、僕はカスタムヘリテイジ92を推す。
両方とも持っているからこそ言える事だ。理由はやはりペン先にある。
デモンストレーターはペリカンとはいえスチールのペン先なのだ。
スチールはLAMYやシェーファー等の安価な万年筆によく使われている。
決して悪い書き味ではないのだが、やはり固めの書き味だ。
カスタムヘリテイジ92は14金相応の滑らかな書き味を持っている。
また分解のし易さでも、カスタムヘリテイジ92のほうが勝っているだろう。
ペン先部分まで容易にバラせるので洗浄が非常に楽、かつ元に戻すのも容易だ。
ただ、決してデモンストレーターをぼろくそにいうつもりはない。
僕が初めて手にした思い出深い万年筆だし、名門ペリカンの万年筆だ。
実用性ならカスタムヘリテイジ92、ペリカン好きならデモンストレーターだろう。


ここで変わり種として、パイロットのカスタム823、通称『プランジャー』を出そう。
このプランジャーの最大の特徴は、なんといってもその吸引機構、プランジャー式だ。
これは空気の圧力を使ってインクを吸い上げるというもので、このモデル独自のものだ。
そして数量は少ないが、これに無色透明モデルが出ている。
プランジャーの本体に緑のインクが吸い上げられる様は、是非見てみたいものだ。


さて、残すところあと二本である。
ここまでお付き合いして頂いた方々の為に、二本一気にまとめて紹介しよう。
ペリカンの『M800 スーベレーン』緑縞と『M600 グリーン・オ・グリーン』だ。

なんといってもスーベレーンの緑縞は、緑の万年筆といってすぐに浮かぶ万年筆だろう。
その完成度と美しさから最高の万年筆とも呼ばれている、ペリカンのフラグシップモデルだ。
これのペン先Bから鮮やかな緑のインクが流れてくる様は、溜息ものだろう。
グリーン・オ・グリーンはM800よりワンランク小さいM600をベースにしたモデルになる。
こちらはスーベレーン独特と立て縞はなく、アクリルが幾重にも重なり出来たという、
美しい緑の層が見るものを魅了する万年筆だ。こちらも緑のインクがよく似合う。
ただ入手のし易さからいえば、スーベレーンのほうが勝っているだろう。


以上が、僕が個人的に選んだ『緑のインクに合う万年筆』だ。

僕はカスタムヘリテイジ92で挑もうと思っている。
既にインクを抜いて臨戦態勢に入っているので、いつでも迎える準備は出来ているのだ。
例のインクが購入出来次第、レビュー日記を書こうと思う。