最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

049.神々に会った

昼間から酒を飲んだ。


僕はいつも通りの喫茶店に行って、
いつも通りのケーキとアイスコーヒーを飲んで、
暫く小説を読みふけった後だった。
僕は猛烈にアルコールが欲しくなった。

ケーキの皿を戻すついでに、酒はあるのかと聞いてみた。
ビールとワインならあるが、ワインは今切らしているとの事だった。
僕はビールを頼んで席に戻り、数分後ビールが目の前に置かれた。

バス・ペールエールという西洋のビールだった。
注いでみると琥珀色に綺麗な泡をしている。
僕はグラス半分のビールをくっと飲んだ。美味かった。
グラスをコースターに戻し、小説を読み進める。
またグラスをあおる。少しビールを足して、小説に戻る。
それを四回くらい繰り返した。

五回目くらいから、だんだん眼が熱くなってきた。
僕はアルコールに決して強い訳ではない。どちらかといえば弱いのだ。
僕は熱くなる目頭を押さえながら後悔と今後の事を思った。
これから高井戸で蕎麦を食べる、その前に渋谷に行こうと思っていた。
なら井の頭線に乗らなくちゃいけない。
そうだ、このまま井の頭線まで頑張って、各駅停車に乗って中で寝てしまおう。
酔いの中で眠る時ほど幸せな眠りは、二度寝くらいしかない。

思い立ってからの僕は早かった。残っていたビールを飲み干し、
レジで会計を済ませて外に出た。10度近い外は少し雨が振り、寒かった。
酔って暑くなっていた僕にとってそれがなんとも心地良かった。
電車に乗る前に、温かい缶コーヒーを飲んでおくのも悪くはない。

僕はふわふわとした優越感に浸りながら駅へ歩いた。