最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

052.今、君はどうだい?

「人間、結局は一人なんだ」と、
誰かからの受け売りの言葉を友達が云っていた。

朝電車に揺られながら、なんとなく僕は思い出していた。


僕は高校を中退している。高校一年の終わりに辞めた。
当時僕には少なかれど友達がいた。仲は良かったと思う。
だけど高校を辞めた途端、僕は日常の中で孤独になった。
予備校には通っていたけど、そこには同年代はいなかった。
二年間、腹を割って話せる友達は一人も出来なかった。
別に話し相手がいない訳でもなかった。家族もいる。
だけど家族と友達では、話す内容も違うし思う事も違う。

だからこそ僕は、大学に入ってから暴走したかのように人を求めた。
実際暴走していた。テニスサークルなんかに顔を出してたのも頷ける。
誰にでも良い顔をしようと勤めた。女の子ともまともに話せないくせに出掛けた。
酒で死にかけた事もある。今思うと壮絶に駄目な学生生活だった。

そして二年の芸術祭を終えた後、僕は泣いた。じっくりと泣いた。
学生然とした生活がそれですっかり終わってしまったかのような喪失感だった。
あれ以来だろう、僕は随分丸くなっていったと思う。
まぁそれでも、その後にも色々と周りに迷惑はかけたんだけど。
僕は気がつけば一人ではなくなっていた。孤独ではない。
声を掛ければ答えてくれる人が沢山いる。一緒に酒を飲み交わしてくれる人がいる。
帰り際に握手を交わしてくれる人がいる。僕はその人達に生かされている。

見た目は一人かもしれない。
でもその裏、というよりも内面には何人もの人がいる。
『人間一人なんだ』といっていた友達も、僕を生かしている一人だ。

全く、そんな事いってないでさ、飲みに誘って欲しいなぁと思うよ。
そして僕は全力で、君を生かすぜ。