最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

057.悩める苦悩

もみあげを、伸ばしている。


僕は髪型を基本、短めにしている。
というのも僕の髪はかなり堅めで、かつ癖っ毛だからだ。

この癖っ毛というのは正直いって、実生活において利点は少ないと思っている。
朝の寝癖は直し難い、ワックスを付けても云う事を聞かない、
帽子を被ればもう取れない(外すとエラい事になっている)、
髪を掻き上げたら最後、オールバックで固定されてしまうなど。
僕はこれに中学生の頃から随分悩まされてきていた。
それでも僕は一時期かなり髪を伸ばしていた。
理由は簡単、後藤正文氏に憧れたのだ。よくある話だ。
当時の僕はもじゃもじゃヘアーの怪しい風貌だっただろう。

今通っている美容室に行き始めたのはそんな時期、
友達の「お前、服に金掛けないんならせめて髪に金かけろよ」
というアドバイスを受けてだった。『確かに』と思った。
それからもう二年が経つ。髪型はいつも同じ、かなりの短めに切ってもらっている。
昔は三ヶ月に一回くらいのペースだったと思うのだが、
今は月一回切りに行っているあたり、僕はもう長い髪型にはなれそうにない。

ある日の美容室で、店長に「もみあげ伸ばしてみたら?」といわれた。
僕は耳の付け根上まで毛を剃っていた。ヒゲは一日一回必ず剃っている。
僕はその、付け根上までがヒゲの延長なのだと思っていた。しかし、

「それじゃテクノカットだよ」

の一言で『よし、伸ばそう』と決意した。

なので今、僕の耳の横には何年振りかのもみあげが生じている。
この生え方はまたよく判らないもので、付け根部分から下は普通に生えるのだが、
付け根部分だけやけに伸びる速度と密度が少ないのだ。
また僕のもみあげは、どうやら『レの字』型のようである。

そのうち車田正美の漫画に出てきそうになるのではないかと今から不安だ。