最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

069.さすらおう、この世界中を

HERZという、皮革製品メーカーがある。


大学四年時、とあるアイデアソンで最優秀賞を取り賞金2万円をもらった僕は、
『せっかく2万なんて金額を手に入れたんだから、ちょっと良い鞄でも買おう』と考え、
当初はエンベロープバッグ(確か8000円くらいだったか)を買おうと思ってたんだけど、
それを見ていた母が「合皮はすぐダメになるから、ちゃんとしたレザーを買った方がいい」
とアドバイスをくれ、僕は土屋鞄を始め、色々なメーカーを物色してみた。
といっても、2万(+でバイトの給料)で買えるレザーバッグなんてたかが知れてる。
土屋鞄やWILD SWANSの商品一覧を見、金額を確かめて僕は溜息をついていた。

そんな時に出会ったのが渋谷に工房を構えるHERZ(ヘルツ)だ。
今でこそ土屋鞄、cyproductなどの複数メーカーの皮革製品を使っているが、
HERZは一番最初に手にしたという事もあり、信頼しているメーカーである。

という訳で、なんか最近Twitterの繋がりでHERZが話題に上がるので、
今日はHERZのバッグの紹介をする。


まずは、僕が最初に手に入れたHERZ、リバーシブルショルダーバッグ

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『大荷物を運ぶ必要はないから、最低限のものが入る小さなショルダーが欲しい』
と思い、そこで目を引いたのがこのショルダーバッグだ。
このバッグ、ひとつの長い袋を真ん中で折ったような構造になっており、
前後の部屋が独立しているのだ。なのでモノを区別させて入れる事ができる。
部屋の収納力も大したもので、小物であれば相当の量が入る。



次に手に入れたのは、棒屋根かぶせバッグ

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社会人になった記念という事で買ってもらったバッグで、
これが実用性を考えて手に入れた最初のレザーバッグだろう。
一本の木の棒を軸に、革を巻くように付けて裁縫がなされている。
当初はこれで通勤をしていたのだけど、底が丸く中のものが動いてしまうので、
後述のバッグに通勤用の座を譲り、容量を生かして一泊くらいの旅行とか、
あとはMacBookAir(13inch)を持ち運ぶ時に活躍をしている。
また、これは手持ち、ショルダー、バッグの3WAY仕様でもあるので、
通勤は手持ちかショルダー、自転車に乗る時はバッグ、なんて使い方も出来る。



で、社会人二年目という事で、改めて考えて購入したのはソフトダレスバッグ

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棒屋根かぶせの『底が丸い』という難点を克服してる、しっかりした底を持つバッグだ。
かといってハードレザーではなく柔らかめのレザーなので、重さはそこまでない。
特徴はなんといってもその開口部分の仕様だ。これは是非実際に試してもらいたい。
最初は面倒だと思うかもしれないが、慣れてしまえばこれほど安全なシステムもないだろう。
現在通勤用鞄として大いに活躍してくれている、使用頻度の多いバッグだ。



そしてこれが今日迎えてきた試作ショルダー(ボディバッグ仕様)。

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先週、一年半ほど乗っていた折り畳み自転車を売り、新車を購入したのだが、
それを気に『ボディバッグでも買おうかな…』と思い立った。
というのも、僕は10月上旬頃に一週間ほど関西に遊びに行こうと思っていて、
その旅に自転車を使おうと思っていたのだ。
そうなってくると棒屋根かぶせだと旅先を移動するのには大き過ぎ、
かといって他のバッグはショルダーなので乗っているうちにズレてきてしまう。
こういう風に理由を組み立ててHERZに向かう訳である。至極当然である。

これはファクトリーショップという工房を兼ねたお店で売られていた、
文字通りの試作モデルである。通常ラインナップにはない。
留め金は丸台おこし蓋といわれるもので、開閉にコツはいるがしっかりと止まる。
またボディはかなり小さいので、中身はノートとペンケースとカメラでいっぱいだ。
これを持ち出す時はパスケースにお札を入れておく必要があるね。



以上が、僕が持っているHERZのバッグ達だ。
どれも個性を持っており、それぞれのシーンで役に立ってくれている。

レザーバッグで一番良いと思っている事は、経年変化を楽しめる事。
使う際に生じる身体との擦れや夏の日に出る汗、
その他色々な出来事が影響を与え、次第に色が深く、艶が出て来るのだ。
僕の場合、ショルダーなので鞄の裏が一番艶が出ている(笑)
この『使えば使う分だけ持ち主に合わせた色を出してくる』のが、
僕はヒジョーに好きなのだ。自分だけのものっていうフレーズに、僕は弱い。
万年筆も『使えば使う分だけ持ち主に合わせた書き味になってくる』ので、
やはりそういう共通点があるものを好きになるんだろうなぁ。



さて、最後になるが、HERZの鞄を考えてる方にちょっとアドバイスを。

まずHERZの殆どの鞄は『内張りがない』。要は皮革以外の布等は一切なし。
なので汁っ気の強いお弁当だとか、冷えたペットボトルを入れたりなんかは、
HERZのレザーバッグを殺しに掛かるのと同じ。これは脅しでもなんでもない。
一応対応策はあるけれど、それでもやらないに越した事はなし。

次にHERZに関わらず、多くのレザー製品は手入れをする必要がある。
僕は不定期に(気になったら)ラナパーと呼ばれる皮革製品用ワックスを塗ってる。
レザーは雨や雪に弱いと言われてるけど、少なくとも僕は雨の日も普通に使ってるよ。
それでいてシミのひとつもないのはラナパーのお陰。耐水性を高めてくれるんだ。
中には「いや、オレは汗や雨のシミも記憶に残して行くぜ!」と一切しない人もいるけれど、
永く綺麗に使いたいのであれば、こういった手入れは必ずする必要がある。
なのでそういった『手入れを手間と思わない人のほうが永く付き合える』と思うな。

最後にHERZの特徴だけど、工房直営でやっている事はかなりの強みだ。
僕が今日買った試作バッグのような通常ラインナップにないものも売ってたりするし、
アウトレット品の販売、ちょっとした事ならすぐに調整してくれる。
実は買ったバッグは元々普通のショルダーだったんだけど、
僕がボディバッグ調に使いたいと言うとすぐさまベルトの長さを調整してくれたのだ。
しかも工賃掛からず。一度やったらリセット出来ないとはいえ、これは助かった。

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皆さんも買われる時、『これをこう出来ないかな?』という点があれば、
店員さんに聴いてみるといい。きっと良い答えをくれるはずだよ。