今年の夏の事。大阪への一人旅の途中で友達と会った際に、
彼のしていた時計を見せてもらった時がある。
一応会う前からその時計の存在は知っていたけれど、実物を見て驚いた。
厚みのあるのが普通の自動巻式腕時計であの薄さ、ドーム状のケース。
今まで見た時計の中でダントツに美しかった。
それから僕も腕時計をもうひとつ増やしたい、と思った。影響とは単純だ。
しかしユンハンスはおいそれと手が出せるものではないし、
なにより同じ時計を手にしてはいけないと思った。ユンハンスは彼の時計だ。
ならば僕も自分が買うべくして買う腕時計を探さなければならなかった。
(という言い訳の下で探しまわった訳だ。)
候補はいくつかあった。ひとつは吉祥寺発のメーカー、Knot。
今国産腕時計で一番有名なブランドではないだろうか?
ケースとベルトが別々に買えて、ユーザーの好きな仕様に出来るのがウリだ。
ベルトも特殊な形状をしている為、お店に出さずとも簡単に交換出来る。
これは結構傾いたけど、結局買わなかった。というのもケースが小さいのだ。
ユニセックス仕様故らしいけれど、普段使っているTIMEXと比べて一回りも小さい。
『これは、僕の腕には小さ過ぎるな』と、早々に諦めた。
クロノグラフ仕様のも一瞬考えたけど、厚みが出るようなのでこちらもパス。
ひとつひとつ紹介するのが億劫なので以降はざっと上げるが、
上記三つ。これらも結局買わなかった。理由もあげるなら、
・自動巻だけどデカい。分厚い
・ビジネス向きだけど、シンプル過ぎて遊びがない
・コンセプトは素晴らしいが、実用性に疑問。あとちょっと高過ぎる
こんな感じ。どれも気になるので、そのうち機会があったら、かもしれない。
こんな感じで僕の腕時計選びは難航し、時が経つにつれその意識も薄れていっていた。
そんなある日、家族で食事をした帰りに地元の駅ナカの商業施設に寄った時、
とあるメーカーのセールのポスターが飛び込んできた。
それがアメリカに本社を構える、デンマーク風デザインをウリにしているメーカー、
スカーゲンだった。そしてその腕時計のラインナップのひとつが僕に刺さった。
それがこの、スカーゲンの定番モデル、ANCHERのヌメ革レザーモデル。
本当はもうひとつのフェルトタイプが最初だったんだけれど、
使えるシーズンを考えてこちらにした。いいよね、ヌメ革。
これの最大の特徴は、短針と秒針がないところだ。つまり長針(分)しかない。
一応時間は9時の部分にある小窓から30分刻みで見る事ができる。
そして使い出してわかったのだけれど、長針しかないって言うのは実に良い。
3つあるうちから1つを見出すのではなくて、1つしかないから判断が明快だ。
子供の時から時計に触れてきているから3つが当たり前だし、無論判るけれども、
今何時なんて大体の場合は把握出来ているし、秒も計る機会は少ない。
多くの場合は今何分かが大事で、それを把握するには長針だけで十分なのだ。
今までビジネスシーンに耐えうる時計っていうのは、実は持っていなかった。
TIMEXもDIESELも、どちらもアウトドアやカジュアル指向の腕時計だ。
来年から、今の職場を離れ、新しい場所でデザイナーとして働く事になっている。
そんな新天地での良きビジネスパートナーに、このANCHERはなってくれるだろう。