最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

148.フィルムと現像

先日、数少ないフィルム写真仲間の友人とレンタル暗室に行ってきた。

オーナーの人に焼き方を教わりながら4時間弱の格闘。

すっぱい匂いと少しの肌寒さを覚えながら浮き上がってくる写真に、

おー、と声をあげた。去年の暗室Bar以来だったもんだから。

あの瞬間は何度見てもワクワクする。

 

ただ焼いていく中で、この作業はきりがないな、と思った。

なんでかっていうとデジタルデータと違ってネガは非常に繊細で、

1秒の差で出てくる像が変わってしまう。

これにはやり直しがきかない。ctrl + zなんて現実にはないんだし。

「さっきはこうだったから、これならどうだろう?」という仮説を立てて、

自分の思い描く「理想の写真」に近づけていくしかない。

 

僕はこの「理想の写真」を思うのがクッソ下手なのだ。

なんとなくこんな感じだろ? みたいな。言語化すらままならない程度。

現に暗室で焼いた写真のうち、満足できるものがあるか? と聞かれたら、

きっぱりとない、といえる。どれも心の底から満足いかない。

そりゃそうだ、自分の中にその理想すらないのだから、つめようがない。

 

これは僕が今までデジタルで中途半端に「現像」してきた故の弊害だと思う。

 

パラメータをいじりながら自分の中で納得いく点を見つけていたんだ。

色々な方法を試していく中で(言い方は悪いけど)妥協点を探す。

 

アナログの「現像」はこれの逆になるわけだ。

理想点を見つけて、そこに近づくための方法を考え、近づいていく。

 

FH000018

 

この写真も、データ化されたこの状態でもまぁ悪くはないけど、

もっと全体のコントラストを強くして、下の黒を暗く落としてメリハリをつけるとか、

そうすれば撮っていた時に僕が感じてた暑さや空気感を出せるんじゃないだろうか?

 

幸い、11月の展示までもう1回、2回と行ける。時間はまだあるんだ。

この時間でモノクロともう一度向き合ってみる。