最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

192.被写界深度目盛の使い方

僕がフィルムカメラを始めてから、ずっと手元にあるバルナックライカ。

正直レンズも、壊れることがない限りずっとこのエルマーだと思う。

それくらいこの組み合わせは気に入ってる。

 

DSCF0620

 

世の中的に、バルナックライカはそこまで評価されていないように感じる。

M型と違ってピント合わせと構図のファインダーは別だし、見やすいとはいえない。

フィルムもハサミで切って形を整えてやる必要があるし最短撮影距離は1mだ。

 

しかし、街中を歩いていて「おっ」と思ったものがあった時、

細かいことを考えずにシャッターを切る使い方をすると、

バルナックライカはこの上ないカメラだと思う。

 

スナップを撮る時に重要になってくるのが、ピントの合わせ方だ。

前にも言っている通り、バルナックライカのピント合わせ用のファインダーは、

小さくて見辛い。ものによっては像が薄くなってきているものもある。

そこで使われるのが被写界深度目盛だ。

 

実はこれを細かく説明してくれていたカメラ屋のブログがあったのだけど、

そこは昨年閉店してブログも一緒に無くなってしまったので、

他の人にこの便利な撮影法を伝えなければ! と思って今回の記事を書いている。

 

DSCF0624

 

レンズの根元に書かれているのが被写界深度目盛。

案外意味を分かっていない人は多い。プロの先輩も知らなかったくらいだ。

最近のレンズはAF前提になっているので書かれてないものが多いが、

マニュアルフォーカスが当たり前だった昔のレンズには大抵書かれている。

あのローライ35にも、形は違えど書かれていたりするぞ。

 

これはその名前の通り、被写界深度を判断するための目盛。

被写界深度とはピントがあう範囲のこと。

絞り値がF1.4だとめちゃくちゃボケた写真が撮れて、

F16だと全体にピントがあってるような写真が撮れたりするだろう。

あれはF1.4の時は被写界深度が浅く、F16の時は深いからだ。

ピントのあう範囲が狭いか、広いか、といってもいい。

 

FH000021

 

被写界深度が浅い例。確かプラナーでF1.4。花の中心以外全てがボケている。

 

FH000012

 

逆に被写界深度が深い例。こちらも同じプラナーでF11くらい。ボケは一切ない。 

 

この目盛は、今の絞り値の被写界深度、つまりピントのあう距離を教えてくれる。

例えば、以下のように右側の赤い"8"の目盛に、"無限"の黒い目盛を合わせてみる。

 

DSCF0626

 

この時、左側にも同じ"8"の目盛があるのが見えるだろうか。

そして左側のには黒い"5"の目盛があっている。

この時の被写界深度の見方は"5m~無限"。

つまり5mからそれ以降の景色には全部ピントがあうよ、と言ってくれているのだ。

参考に、僕の持っているエルマーの被写界深度を全て記載してみる。最長は全て無限。

 

  • F221.85m
  • F162.45m
  • F114m
  • F84.8m
  • F5.66.7m
  • F410m
  • F3.5:30m?~(目盛が真ん中で範囲がわからず、恐らくの数字)

 

ちなみに黒い目盛には20m10mなど具体的な距離も書かれている。

基準も最長のほうにするか、最短のほうにするかは自由なので、

いろいろなパターンで被写界深度を測ることができる。

例えば、絞り値はF8を基準とした時、

 

DSCF0631

 

最長距離を10mにすると、最短距離は3.5mくらい。

 

DSCF0632

 

最短距離を1mとすると、最長撮影距離は1.2mくらい。

 

僕は大体F11F16にで無限基準に目盛を合わせ、あとは露出を測って撮ってる。

スナップで写したいものは、目の前にあるもの全て。

そしてそれとの距離は大抵23mくらい空いているものだ。

 

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FH000020

 

FH000022

 

道具とは、使い方を覚えることで、

はじめて上手く使えるようになるものだと思う。

 

同じバルナックライカを使っていて、スナップを撮って、

このやり方をやったことがない人は是非やってみてほしい。

きっと今までのピント合わせの煩わしさから解放されて、

楽しくスナップを撮ることができると思う。

 

その時には、外付ファインダーもお忘れなく。