205.平らな世界
先日、学生時代にアルバイトしていた店に行く機会があった。
大学一年生になったばかりの僕は、とにかくバイトがしたかった。
高校をドロップアウトした時もしたかったのだが、大学に入ってからにしろと言われ、
自由に使えるお金を得るための手段としてバイトできるのを心待ちにしていたのだ。
選んだ店は、地元ではどうやら有名なお店らしかった。僕は全然知らなかった。
表に出て注文をとったりもするのかな、と思ったけど結局ずっと厨房。
ここのバイトでいろんな人を知り、いろんな世界があるのだと知った。
年上だからと罵詈雑言を浴びせてくる人と一緒に入るのは本当に嫌だった。
でもその人が教えてくれたバンドは、今でも好きだったりするから不思議だ。
まかないに表に出てない裏メニューを「早く食え」と作ってくれた先輩。
その先輩と行った、別の先輩一押し(週三で食べてる)のラーメンがマズくて、
「あいつの作る料理はうまいが下はバカだな」と言ってて笑った。
客がこない時は年の近い先輩と音楽の話をいろいろした。FACT、今でも聴いてます。
スペアザの話なんかもしましたっけ。結局一緒に飲みに行けず、残念です。
一番仲のよかった友達は今地元近くのバーで働いてる。最近顔出せてないや。
良くも悪くも、ここは確かに僕の青春時代だった。
ここで自分が淹れたコーヒーをお客さんが褒めてくれて、それが嬉しくて、
コーヒー専門店に移って半年でクビにされたんだ。それも今は良い思い出。
そんなことを思い出しながらロッカーへの通路を眺めていて、
やがて出てきたモーニングのサラダが、もう、信じられないくらいマズかった。
一緒に出たシナモントーストとコーヒーの印象がなくなるくらいマズかった。
いったいどんなドレッシングを使えばこうなるんだ? あと冷蔵庫動いてるのか?
次来る時は、いつもまかないで食べていたビーフストロガノフを食べよう。
あれならきっと、まだ、美味しいはずだから。