最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

004.音楽の話 その2

 前回の続きになります。

002.音楽の話 その1


 小学校の時、ポール・マッカートニーからロックの洗礼を受け損ねた僕が、
本格的に音楽を聞き出したのは中学校に入ってからだった。

時音楽にそこまで興味がなかった僕は、
アニメや特撮のオープニングテーマとかをパソコンで聴くことが多かった。
そんな中、母親がMDプレイヤーをプレゼントしてくれた。
縦横6cmくらいの小ささに十曲くらいを纏めておけるMDは当時の僕には革新的だった。
中学校の行き帰り、教師に見つからないようにこっそりと、
バスの中で音楽を聴いて帰るのが僕の楽しみになった。

それからまたしばらく経った頃、僕たちの学年でFlashアニメーションが流行った。
今でさえ仕事で触る機会が増えたものの、
当時の僕らからすればFlashはさながら魔法のような技術だった。
休み時間は新しくネットに上がってきたFlashアニメの話題で持ちきりになったものだ。
中でも、特にBUMP OF CHICKENの楽曲に
AA(アスキーアート)のアニメを合わせたものに人気が集まっていた。
バンプの有名な「天体観測」や「ラフメイカー」といった曲もそういった
Flashアニメのモチーフにされており、そういった曲が僕の音楽感性に少しだけ火を付けた。
「オンリーロンリーグローリー」は僕が最初に買ったロックシングルであり、
ユグドラシル」が最初に買ったロックアルバムになった。
MDはたちまちバンプの曲であふれ、学校の行き帰りは毎日のように聞き込んだ。
気がつけばそれまで聴いていたアニメ・特撮のMDは鞄の奥に行ってしまっていた。

こうして僕は、おそらく同年代の人々にも多いであろう、
BUMP OF CHICKENによるロックの洗礼を受けた訳である。
しかしそれはほんの切っ掛けに過ぎず、話はもう少し進んだところから本番を迎える。


その日は父親と、家から少し離れたラーメン屋に向かっている途中だった。
父親は生粋のロッカーであり、いつもだったらお馴染みのヴァン・ヘイレンなんかが
流れているはずだったのだが、その日は何故かAMラジオが流れていた。
僕はそれを気にせず、相変わらずバンプの曲を聴いていたのだが、
これまた何故かとあるタイミングで僕はイヤーホンを外した。

本当に、二つの偶然が重なった瞬間、
ASIAN KUNG-FU GENERATIONの「君という花」が聴こえてきた。