人は何かしらルールを持っている。
そんなのはない、という人でも、多分本人が気付いていないだけで、
いくつかのルールに乗っ取って生活をしているはずだ。
僕にもそういうルールがある。
それは『会社行き帰りどちらかに缶コーヒーを飲む』というものだ。
そう、僕は缶コーヒーが大好きなのだ。
元々喫茶店でコーヒーをいれていたから、というのは大して関係ない。
そもそも僕はブラックコーヒーはそんなに得意ではなかった。
店で出すから、という理由で味見をして、段々と慣れていったのだ。
僕の缶コーヒーの原点は『ポッカ ブレンドコーヒー』だ。
父親と釣りに出掛けた時に、飲んでいたのを分けてもらったんだと思う。
その甘くてほろ苦い味に、僕は幼いながらに憧れと好意を抱いた。
それから今日に至るまで、随分沢山の缶コーヒーを飲んできた。
一番缶コーヒーを飲んだ時期は、やはり大学時代だろう。一年前までの事だが。
昼休みや授業の合間に同級生と連れ立って缶コーヒーを買い求め、
そしてそれを飲みながら煙草を吸い、漠然と未来の話をしていた。
もし今の僕を見れたとしたら、当時の僕はどんな事を話して煙に巻くだろう?
兎に角山のような空き缶と吸い殻を、僕は大学に残していった。
缶コーヒー中毒、といってもいい。僕はそれを毎日飲む。
そうしないと身体が上手い事動いてくれない気もする。
決してカフェイン中毒ではない。純然たる缶コーヒーの中毒だ。
『缶コーヒーはコーヒーじゃない』という人もいるし、僕もそう思う。
缶コーヒーはあくまでも缶コーヒーだ。
コーヒーのように濃い琥珀色をしていないし、苦みも酸味もない。ただ甘い。
コーヒーも勿論好きだけど、僕はそれだから缶コーヒーが好きなのだ。
朝に缶コーヒーを飲めば、良い朝が迎えられる。
夜に缶コーヒーを飲めば、良い一日だったと思える。
かといって朝晩飲めば素晴らしいのか、というと、多分それは違うと思う。