154.『愛された失敗』をしよう。
クロスプロセスは元々現像の失敗から生まれた技法だ。
カラーフィルムにはざっくり分けて二種類ある。
ネガフィルムとポジフィルムだ。ポジは別名リバーサル。
現像とは、撮り終えたフィルムに薬品処理をして画像を出現させる処理だ。
この時に使う薬品がポジとネガでは異なる。
前者ならC-41、後者ならE6というのが一般的、というか当たり前だ。
ある時、現像処理をしていた人がポジフィルムにの処理をしてしまった。
これは正しい現像としては失敗だ。
だけど浮かんできたのは、色合いやコントラストのバランスが乱れた像だった。
この失敗を逆手に取って、意図的にその処理を行うのをクロスプロセスという。
プロセス(薬品)がクロス(入れ替わり)してるからクロスプロセス。
昔の人はなかなか格好良い言い方を考えたものだね。
そんな名前を与えたくなるほど、この技法に魅力を感じた人がいたのだろうね。
僕はこれをケヴィン・メレディスの本で知った。
そこに載っている写真は、真っ当な美しさとは違うギラギラとした強い力があった。
現像が化学薬品の反応だと嫌でも思い知らされる、その色と光の具合。
この独特の像が持つ魅力は、僕がフィルムを始めた由縁でもある。
これを大切なシーンでやろう、なんてことは言わない。
でも写真を撮る事は崇高な芸術じゃなくて、基本は趣味なのだから、
たまにはこういう遊びをするのも楽しいものだよ、と、思うのさ。
6ヶ月放ったらかしたのは、失敗だったなぁ。