バルナックライカはとても良いカメラだ。これは疑いなく言える。
70年以上昔のカメラだけど、ガサツな使い方をしてもちゃんと動いてくれるし、
フィルムを巻いて、ダイヤルを合わせてシャッターを切るまでの感触が気持ち良い。
買う気がない人は触らないほうがいい。きっと後悔すると思う。
そんなバルナックにエルマーをつければ大体のものは撮ることができる。
ただ、一点だけ欠点のようなものがある。 それが『最短撮影距離』だ。
これはレンズのピントの合う一番短い距離のことで、
今のデジカメなら1cm以下まで寄れるのもある。マクロ撮影とかがそれだ。
これがバルナックライカの場合は【1m】。こいつがすごい曲者なのだ。
1mも寄れればいいだろうと思うだろうが、そんなことはない。
座ってテーブルの上のコーヒーカップを写そうとするだろう。大体20〜35cm。
とてもじゃないけど1mの最短撮影距離じゃ撮れない。
向かいに座った彼女の食べるスパゲッティは思い切り退け反らないと撮れない。
しかも失敗してるときたもんだ。ピントが合ってれば良い写真だったろうに。
使い始めた時、これには随分難儀した。それまでのは30cmくらい余裕だったのだ。
特にGRDⅣなんてのはマクロモードが優秀っていわれてたくらいだし、
手の届く距離にあるものを撮ることなんて簡単だと思っていたもんだからね。
ただ、1年くらいそれを使い続けてきたからだろうか、慣れとはすごいもので、
この距離じゃピントが合わないから、これくらいならいけるだろうと、
大体どれくらい離れればいいか、肩肘張らさないで良い距離がわかったきたのだ。
随分ライカを扱いやすくなったと思う。1mなにするものぞ。
1mという距離感の写真。50mmの画角。こうしてみると寄れてるように見える。
初心者が50mm標準の単焦点レンズを使う最大のメリットは、
『自分で動くことで被写体との距離感を掴む良い練習になる』
ということがあるそうだ。実際そうだと思う。
ズームレンズだとぼうっと立ってるだけで寄れるけれども、
でもそれだと写せないものだあるんだろう。データじゃ図ることの出来ないものが。
それを先人は空気感と呼んでるのかもしれない。
ただまぁ、1mに慣れたせいか、寄れるカメラを使うと途端に嬉しく感じる。
「ああーこんなに寄れるのか。ならこういう構図で撮れるや」みたいな。
でもデジタルカメラはもうあまり持ちたくないな。やっぱりフィルムか。
ちょっと前に話をさせていただいたカメラマンの人いわく、
「良い写真を撮るために最適な距離がある。それは手がギリギリ届かない距離だ」
届かない、その時に感じる感情が写真に出るのだと。なるほどな、と思った。
そうだとするならば、大体70〜80cmくらいの最短撮影距離がいいんだろうか。
なるほどな、なるほどな。
そういえば最短撮影距離70cmの良いカメラがあるんだっけ(というフリ)。