019.シャリをゆっくり噛み締めて
最近やたらと魚を食べる事が多い。
というか、多分ほぼ毎日魚を食べている。
夕飯に食べる事もあれば、ランチの時に食べる時もある。流石に朝はない。
先日のランチ時に見つけた食堂の焼サンマと刺身三点定食は美味かった。
そんな魚好きの僕も、未だ食べた事ないものがあった。
それは『廻らない寿司』である。
高級な食事の代名詞といっても過言ではない、『廻らない寿司』。
友達との飲みを逃し、フラストレーションを残していた僕は、
勢いに任せて『廻らない寿司』を食べに行く事にした。
場所は吉祥寺のハモニカ横丁である。
いつだったか、確か友達と飲みに行こうとしていた時、
僕は路地にある一軒の寿司屋を見つけていた。
オープンな感じで下町感溢れ、色んな人が笑いながら、
狭い空間で美味そうに寿司を食べていたのが印象的だった。
『ああ、こういう寿司屋なら気軽に食えるな』と思った。
さて、その店にいよいよ行く事になった。
なんとなくハモニカ横丁に入り、狭い路地を進んで行く。
あった。目当ての店はかなり簡単な道筋だった。
前に見た時は沢山の人で溢れていたが、今日は少しだけ空いていた。
「一人だけどいいですか?」と断りを入れて席に座る。
周りは2、3人の会社帰りの人達。僕が席につく前にその人達の目線が気になった。
そりゃそうだ。なんせ寿司屋に若い男(という事にしといて欲しい)が一人で来たのだ。
僕は基本一人だろうがなんだろうが入りたいと思った店には入る性格である。
席についてメニューを眺めながら気付いた。やっぱり結構いい値段だ。
しかし、ここまで来て寿司をちょっとだけ頼んで帰るのは格好が付かない。
かといって酒を頼み、酔った勢いでとんでもない注文しても危ない。
だから酒の注文は丁重にお断りした。
とりあえず一番安いネタから注文をする事にする。
「すいません、タコとイカと、サーモン下さい」
「あ、ごめんなさい……今日もうタコ切らしてるんですよ」
いきなり出鼻を挫かれた。ガーン、ってやつだ。
もう一度アジを追加して注文したらサーモンを聞き逃されてしまった。
注文を終えると、最初に寿司を置く為の皿が出された。端にはガリが乗っている。
ほどなくしてまずはアジが来た。上に醤油で和えた刻みネギ。
割り箸でつまんで、シャリに醤油をつけて食べる。
美味い。ネタが分厚いので食い応えがある。さすが廻らない寿司か。
『ああ、今俺、すげえ贅沢してるな…』と思いながら飲み込んだ。
さて、この後いくつかのネタを頼み、計8貫の寿司を胃袋に納めたのだが、
実を言うとその殆どの味を明確に覚えていない。駅のホームで気付いた。
ネタがどんなだったのかはちゃんと覚えている。美味かったという事も。
それでもこの物足りなさは、ネタのせいだとか店のせいではない。
単純に僕がびびっていたのだ。あの状況に、あの店の空気に。
周りは酒を飲み話しながら食っていた。
あれがあの店で、美味く食べる為の作法なのだ。僕は無作法者だった。
多分廻らない寿司というのは、寿司だけで腹を満たす場所なのではない。
今度はちゃんとした作法を持ってして、あの寿司に望みたいと思う。
というか、多分ほぼ毎日魚を食べている。
夕飯に食べる事もあれば、ランチの時に食べる時もある。流石に朝はない。
先日のランチ時に見つけた食堂の焼サンマと刺身三点定食は美味かった。
そんな魚好きの僕も、未だ食べた事ないものがあった。
それは『廻らない寿司』である。
高級な食事の代名詞といっても過言ではない、『廻らない寿司』。
友達との飲みを逃し、フラストレーションを残していた僕は、
勢いに任せて『廻らない寿司』を食べに行く事にした。
場所は吉祥寺のハモニカ横丁である。
いつだったか、確か友達と飲みに行こうとしていた時、
僕は路地にある一軒の寿司屋を見つけていた。
オープンな感じで下町感溢れ、色んな人が笑いながら、
狭い空間で美味そうに寿司を食べていたのが印象的だった。
『ああ、こういう寿司屋なら気軽に食えるな』と思った。
さて、その店にいよいよ行く事になった。
なんとなくハモニカ横丁に入り、狭い路地を進んで行く。
あった。目当ての店はかなり簡単な道筋だった。
前に見た時は沢山の人で溢れていたが、今日は少しだけ空いていた。
「一人だけどいいですか?」と断りを入れて席に座る。
周りは2、3人の会社帰りの人達。僕が席につく前にその人達の目線が気になった。
そりゃそうだ。なんせ寿司屋に若い男(という事にしといて欲しい)が一人で来たのだ。
僕は基本一人だろうがなんだろうが入りたいと思った店には入る性格である。
席についてメニューを眺めながら気付いた。やっぱり結構いい値段だ。
しかし、ここまで来て寿司をちょっとだけ頼んで帰るのは格好が付かない。
かといって酒を頼み、酔った勢いでとんでもない注文しても危ない。
だから酒の注文は丁重にお断りした。
とりあえず一番安いネタから注文をする事にする。
「すいません、タコとイカと、サーモン下さい」
「あ、ごめんなさい……今日もうタコ切らしてるんですよ」
いきなり出鼻を挫かれた。ガーン、ってやつだ。
もう一度アジを追加して注文したらサーモンを聞き逃されてしまった。
注文を終えると、最初に寿司を置く為の皿が出された。端にはガリが乗っている。
ほどなくしてまずはアジが来た。上に醤油で和えた刻みネギ。
割り箸でつまんで、シャリに醤油をつけて食べる。
美味い。ネタが分厚いので食い応えがある。さすが廻らない寿司か。
『ああ、今俺、すげえ贅沢してるな…』と思いながら飲み込んだ。
さて、この後いくつかのネタを頼み、計8貫の寿司を胃袋に納めたのだが、
実を言うとその殆どの味を明確に覚えていない。駅のホームで気付いた。
ネタがどんなだったのかはちゃんと覚えている。美味かったという事も。
それでもこの物足りなさは、ネタのせいだとか店のせいではない。
単純に僕がびびっていたのだ。あの状況に、あの店の空気に。
周りは酒を飲み話しながら食っていた。
あれがあの店で、美味く食べる為の作法なのだ。僕は無作法者だった。
多分廻らない寿司というのは、寿司だけで腹を満たす場所なのではない。
今度はちゃんとした作法を持ってして、あの寿司に望みたいと思う。