最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

022.馬鹿も受理される

人は5000円で、何が出来るだろうか。

新しく迎えるデザイナーさんと先輩の三人で飲んだ帰りの事。
先輩が鞄からひとつのクリアファイルを取り出して、
「石、買ったんだよ」といって写真を見せてくれた。
ラブラドライトと呼ばれるその石は、
写真でも判るくらい異質な輝きを放っていた。なるほどこれは綺麗だ。
「これが他の宇宙空間と繋がっているんだって」と語る先輩。
値段を聞けば、5000円。

これを高いと取るか、安いと取るか。


僕は昼間の事を思い出した。某有名書店の文具売り場での事。
目の前にはローラー&クライナーのインクコーナーが広がる。
その端、ガラスケースに納められた二つのインク。
片や日本国内500本限定のDer Blaue Reiter『青騎士』。
片や日本国内400本限定のブラウ・シュバルツ。
値段は前者が4200円。後者が3425円。
忘れてはいけないのが、このふたつが単なるインクだという事。
僕は結局『青騎士』を選んだ。後日やってくる新しい相棒の為に。

恐らくこのブログを見ている人のほとんどが、
「なんてバカな買い物をしているんだ! こいつは気が狂っている!」
と思われるだろう。そりゃそうだ。
インクなんてセーラーとかのなら1000円もしないで買える。
しかし、僕はあえて4200円もするインクを選んだ。
何故なら、1000円のインクを四つ買っても『青騎士』は得られないからだ。

金銭の対価の価値は人が決める事で、それをとやかく言うのはおかしな話だ。
時計に2万、悪くない。コートに7万、結構だと思う。靴に30万、素敵な話じゃないか。
例え誰かに笑われたりなんなりしても、その価値がぶれる事がなければそれは正解だ。

5000円という数字は、そう考えると、
中々人によって使い方が分かれる良い案配の金額だ。
今回以外だったら、僕は何を買っただろう?
何か美味いものを食べに行くのに使ったかもしれないな。
髪の毛が伸びていれば、散髪にでも出掛けたかもしれない。

でも多分、石は買わないだろうなぁ。