024.君が忘れて消えた街
この街に、嫌なモノが来るのを聞いた。
僕の住んでいる街は、とても静かな街だ。
『文教都市』として街は発展し、駅前にはパチンコ屋はない。
かつてはゲームセンターがあったけど、それももうなくなった。
唯一誇れるものは、春になると桜がいっぱいに広がる大きな通りと、
そこで暮らす人々だ。僕はその人達にお世話になっている。
でかい大学もあるけど、正直あれは好きにはなれない。
そんな街に宗教団体の施設が出来ると聞いた。
駅から10分も歩かない、広い広い場所に。
来年の今頃には彼らが蠢いているのかと思うと、ぞっとする。
何を信じるか、なんて人の勝手だ。
だがすり寄ってくる事まで僕は受け入れたくない。
信じていたら救われるならどれだけ楽な事か。
僕が好きだったのは、街なのだろうか、人なのだろうか。