最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

068.夏の始まりと終わり

 このブログも随分久しぶりの更新になる。


 最後に更新したのは去年のクリスマスである。しかも万年筆の話。
色恋沙汰にとんと縁がないのは今も大して変わりはない。

この一年近くの間、僕が何をしていたのかといえば、
仕事をして、それで稼いだお金で万年筆や鞄や靴を買い、友人と食事をし、
持っていた自転車を売り新しい自転車を手に入れたりといった事だ。
それはどれも僕に少なからず変化をもたらしてきている。

一番解り易い変化は、見た目だろうか。
僕は去年まで服とか靴とかには特に思い入れを持たず過ごしてきていたのだが、
最近は徐々にそちらに投資する方向にシフトしつつある(とはいえ万年筆は買う)。
今まで履いた事のなかった七分丈のパンツに、黒いDr.Martinの靴。
(少なくとも僕にとっては)絵に描いたような夏っぽさだ。

マーチンの靴は、前から友達が勧めていたのもあったが、
決定打になったのは5月下旬に亡くなったあるロックンローラーの言葉だ。
その言葉は僕が中学生の頃から敬愛して止まないバンドのボーカルに云った言葉。

「マーチンの靴紐は、硬く縛って履かなくちゃいけない」

これだけである。
これだけの言葉なのに、僕は一発で購入を決意した。
最近靴紐を硬く縛ったのはいつだったろう?
反対の踵で靴を脱ぎ剥ぎするような輩だった僕は、靴紐を硬く縛る意義を思った。

僕はその人の事をよく知らなかった。前から名前は聴いていた。
そして亡くなったのを聴いた日にiTunesで「ocean」という曲を聴き、悔やんだ。
どうして今の今までこの人達の曲に耳を傾けなかったんだろう。
そのバンドの一曲はひどく響いた。

「急げ、海へ、オーシャンへ手を伸ばせ」

今はまだ海へは行けない。
だから行ける時、すぐに行けるように、すぐに手を伸ばせるように。
今日も僕はマーチンを硬く縛るだろう。