093.開きっ放しの絞りは正義か悪か
カメラの『絞り(F値)』の話。
OM-D E-M5を買って間もない頃、僕は一本のレンズがすごく気になっていた。
それは前に記事でも触れた、M.ZUIKO DIGITAL 45mm f1.8。
OLYMPUS 単焦点レンズ M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 シルバー
- 出版社/メーカー: オリンパス
- 発売日: 2011/09/09
- メディア: 付属品
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これは色んなとこで色んな人が絶賛している、魔法のようなレンズだ。
F1.8という明るいレンズで、それまでボケが少ないなんていわれてたミラーレス、
マイクロフォーサーズに革命を起こした、らしい。大体そんな感じの事を聴いた。
ボケ。単語だけ抜き出すとなんか馬鹿にされてるような、怒られてるような。
でもコレ、写真やってる人はみんな大好きだと思う。もちろん僕も大好きだ。
良いと思う原因は、丸くボケた光源や物が出す柔らかさ、とかなんだろうか。
とにかく綺麗に背景がボケた写真撮れたら嬉しい。
だからとにかくボカした。なんでもボカした。明るいレンズも探した。
ジャンクコーナーでスーパータクマー 50mm F1.4を見つけた時は小躍りしたもんだ。
それを使って、こんなのとかも撮った。横断歩道から撮った交差点だったもの。
こうなったらもー何がなんだかわからない。とりあえず綺麗だねって感じ。
そんなミラーレスと明るいレンズを使い続ける中、
レンジファインダーカメラを使い出して、絞りについて気付いた事がある。
僕がいつも使うフィルムはISO400のものが多い。AGFAのVista plusとかだ。
これを入れて外に出て、さて撮ろうとして露出計アプリを起動させる。
するとF値が2.8とか3.5とかだと、シャッタースピードは1000以上になったりするのだ。
フィルムカメラのISO感度は、フィルムそのものに依存する。だから一度入れたら撮り切るまで変えられない。
次に、写真をブレさせずに綺麗に撮るための基本は、シャッタースピードを維持する事だ。
大体1/60以下くらいから遅いと言われている。1/1000くらいの高速シャッターで撮れば、まぁ手ブレが起きる事はないだろう。
なので、ISO400で1/1000くらいで撮るってなると、昼間はF8〜16くらいで撮らざるをえない。
『F8!? なんだその面白くもなんともない数値は! 開放2以上のレンズはクソだ!』
くらいにまで内心思っていた僕にとって、その数値の強要は拷問に近かったのだが、
これが多分F11〜16。被写界深度が深いので全体的にピントが合ってる。
街の雑踏感を出せたほうがいいこの構図なら、この絞り値で問題ない。
むしろこれでどっかボカしたら「何が言いたい写真なの?」になってしまう。
典型例はこれだろう。先にあげたスーパータクマーの絞り開放で撮った写真。
明るいオールドレンズ独特のホワホワが出ていてそれはそれでいいけれど、
ピントがどこにあってるのかぱっと見でわからなくて混乱する。
全体にピントがあっていたら、もっとよくなったんじゃないかと思う。
これは後ろが少しボケてるから、F5.6〜8くらいだろうか。
それでも真ん中の牡丹にしっかりとピントがあってるので沈む事もない。
むしろそれくらい絞ったほうがピントがあった部分のシャープさが際立つ。
正直な話、僕は3.5以上の絞り値をずっと避けてきた。
ボケてりゃいい絵が撮れる。そんな一種の呪いのようなテクニックにずっと縛られていた。
もちろん、ボカす事が悪だと言いたい訳じゃない。加減の問題なのだ。
ボケはその写真が何をどう言いたいのか、それを表現する為のテクニックのひとつに過ぎない。
写真を見た人に、僕が何を思ってその写真を撮ったのか、
僕はその写真で何が言いたいのか、それをちゃんと伝えられるようになる。
それが出来ないと写真を創作にするのは難しいだろう。
そんな絞りの大切さに気付かせてくれたフィルムカメラ達。
今年はまだまだある。勉強はここからだ。