081.タクマーから見える景色
オールドレンズとは、ざっくりといえば古いレンズだ。
オートフォーカスなんてものもなく、全ての機能を自分の手で調整する必要がある。
今でこそ、記憶媒体はSDカード、現像はレタッチソフトでの加工の事をいうようになったが、
90年代は当たり前のようにフィルムだった。
僕の子供の頃のカメラへのイメージといえば『面倒くさくて難しい』で、
新潟の父の家のタンスの奥に仕舞われていたカメラだとか、
母方の祖父の持っていたカメラのことなんててんで興味がなかった。
今になってそれに対して興味が出てきてしまったのが悔やまれる。
僕の祖父は二人とも亡くなっているので、その話をすることも出来ない。
話が少し逸れたが、ようはそんなフィルム全盛期の頃に作られていたレンズ群の事だ。
そんな中でも、特に有名なのはM42マウントと呼ばれるレンズだろう。
このマウントは一時期、世界共通のマウントだった時期があるらしい。
今では各メーカーがそれぞれのマウントでレンズを出しているが、
買い手としてはいっそ全部同じにしてくれたほうがどれだけありがたいことか。
M42はそんな望みをアッサリ叶えていたマウントだった。
このレンズ達は、マウントアダプターを介せば今のカメラでも使う事が出来る。
僕のOM-D EM-5はOLYMPUS製ミラーレスで、マウントはM4/3マウント。
マウントはひらたく言えばジョイントの事で、これが合ってないとカメラにレンズを付ける事ができない。
逆に言えば、この問題さえどうにかすれば、どんなレンズでも取り付けられる。
僕が持ってるのはこのアダプター。価格も安く、見栄えもE-M5にぴったりだ。
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最近の僕のメインレンズは、Asahi Super-Takumar 1.8/55mmだ。
これは旭光学工業株式会社(現リコーイメージング)の作っていたレンズ。
当時の一眼レフカメラの標準レンズとして売られていたらしい。
探してみたらamazonでも出た。すごいなamazon。本当になんでも売ってる。
色んな人が絶賛しているから改めていうのもなんだけれども、このレンズ、僕はとても好きだ。
M4/3マウントで使った場合、35mm換算で110mmという中望遠レンズになる。
中望遠レンズといえば、M.ZUIKOの1.8/45mmというレンズが有名だろう。
OLYMPUS 単焦点レンズ M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 シルバー
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類に漏れず、僕もあのレンズを一度手にしていた。だけど今はもうない。
90mmという、中途半端な中望遠感がどうにも好きになれなかった。
比較用に、残ってるだろうそのレンズの写真を見返したが、良いモノはない。
それだけ僕はあのレンズが苦手だったんだろう。
だが、このタクマーは好きになった。
その差は20mm。110mm。これが僕に丁度良い中望遠なんだろう。
このタクマーは、オークションで3500円くらいで購入した。
上の、amazonで売られてるやつの半額くらい。
そして先に上げたM.ZUIKOは新品で25,000円で、それの1/7の値段だ。
その7倍の価格差とはなんなんだろう。
無論、60年くらい前の製品。
新品じゃない、オートフォーカスもない、レンズにはうっすら曇りが見える、
塗装は一部ハゲかかっていて、ヘリコイドはややユルめだった。
でも、そんなの些細な事だ。
高度な電子技術が取り入れられてない分、その分解は容易だ。
道具さえあれば、このタクマーは15分でバラす事が出来る。
そして、曇り除去や絞り調整を除けば、ド素人の僕だって治す事が出来た。
ヘリコイドのトルクは、グリスアップした今では非常に心地良い。
マニュアルフォーカスは、確かに面倒だ。
シャッター半押しで正確にピントなんて合わない。半押しなんて概念すらない。
だけど、景色を捉えて、カチカチと絞りを変更して、
電子ファインダーを覗きながらヘリコイドを回してピントを合わせる。
そしてここだと思った時にシャッターを切る。
機械に任せっきりじゃない、自分の手で写真をより良いものにしていく。
そこにマニュアルフォーカスの良さがあるんだと思う。