最後のフィルム世代より

終わりが来る前に、まだ出来る事がある。

007.文具に関するいくつかの考察 その1

文具、正確に言うなら文房具だろうか。僕はそれを趣味としている。
文具を使うシーンは、日常を生きる中で毎日のようにある。
そんな「当たり前」のものである文具がどうして趣味になったのか。


 事の発端は、あるデザイナーの方が使っていた万年筆だった。
僕は学生時代に出版社で拡材(宣伝用のポップ等)を作るアルバイトをしていて、
その時にお世話になっていた女性デザイナーの方がいらした。
ある日僕はその人に友達への誕生日プレゼントを相談した。
その友達は絵がとても上手く、来年からゲーム会社への就職が決まっていた。
そんな友達に何をプレゼントすればいいだろう、と訪ねたのだ。
そしてデザイナーの方が「これはどう?」といって見せてくれたのが、
白のLAMY safariだった。

LAMYはドイツの文具メーカーとして有名で、中でもsafariはエントリーモデルとして
日本でも多くの愛用者を持つ万年筆だ。
初めて目の前で見て、手にしたLAMYのsafariは僕の想像以上に良いものだった。
万年筆という、一般的には「扱い辛い」「メンテの大変な」筆記具というイメージとは裏腹に、
とても持ちやすく書きやすい、そして見た目が(個人的には)恰好良いsafariに、
当時購買部で買った文具を使っていた僕は一目惚れしてしまった。

かくして、

「とりあえず自分で使ってみて、良かったらあげよう。そうしよう」

という言い訳をしながら、当時したら決して安くはなかった、
LAMYのsafariのクリアモデルを購入し、僕は文具好きへの第一歩を踏み出したのだった。